教育で読み解く山口銀平という男の子
まずは脳科学本の一節を読んでいただこう。
ヒトの気質は、その人の経験する出来事に強い影響を与える。例えば、いつも活発で外向的で愛想の良い子に接する時、まわりはどんなふうに振る舞うだろうだろうか。おそらく、引っ込み思案であまり笑わない子どもに対するよりも、たくさん笑いかけ、たくさんスキンシップをしているはずだ。子どもがそうしてずっと外向的に振る舞っていれば、その子を取り巻く世界は自然と、内向的な子をとりまく世界よりも、ポジティブなものになるのである。
このことから何が言えるかというと、
子どもが将来どんな人間関係の中で生きることになるかは、運や偶然で決まるものではなく、その子の感情のスタイルが、その子を取り巻く世界を規定するということである。
つまりは教育だ。
にこにこ笑って愛想の良い子は色んなチャンスに恵まれ、人生成功する可能性が高まるという単純な話である。
たったこれだけでも読んでいれば、未来の自分の子どもに与えるべき教育の骨子くらいは明確になるだろう。
山口君あたりはまさにその通りに育てられた。
山口君は生まれつき重度のADHDだが、小学生の時に受診した精神科の主治医が良かった。彼にコンサータやストラテラを処方するといった愚かな選択をせず、
ADHDを障害と考えず、才能を伸ばす方針を徹底的に指導したのだ。
ADHD児は元来陽気で気のいい子が多い。それをフル活用し、主治医は父親に、息子を寛容に受容共感する教育を徹底させた。その甲斐あって、小学生の頃から今日まで、山口君は活発で外向的で愛想のよい男の子でい続けている。周りは山口君にたくさん笑いかけ、たくさんスキンシップしただろう。その証拠に、彼はからだのどこを触られても幼児みたいに気持ちいいと言って無邪気に喜ぶ。触られることに微塵も不安や疑いを持たず、
好意的なスキンシップを与えられるに違いないと信じて、完全無防備となり、からだを相手に委ねる。
この委ね方のレベルがあまりにも高すぎて、山口君と関係を持った女は全て、彼を溺愛することになってしまうのだ。