精神科医みそのれいの「失敗しない男選び」

男選びに失敗しまくる貴女のために

アイデンティティで読み解く山口銀平①

アイデンティティや自己肯定感というのは、「言葉による定義が定まっていない」ため、非常にわかりづらい。その割に人はその言葉を使うのだが。

その言葉を、ちゃんと理解していないくせに、使いたがる。

とでも言えばわかりやすいだろうか。するとどういうことが起こるか。簡単ね。わからない人、誤解する人がますます増えるという現象が起こる。まるでコロナウイルス感染者が増えるように。あるいはバイオハザードのアンデッドが増えるみたいに。

そうしていくことでアイデンティティも自己肯定感もさらにより一層、わかりにくいものになっていく。

さて、4年間私が追い続け、研究対象にしてきた山口君を通じ、この「アイデンティティとやら」を説明しようと思う。言葉の定義だけではイメージを掴むことすら難しいからだ。

福岡出身の山口君を表参道で初めて見たとき、不思議なことに、九州出身の子かなと感じた。(これ、早くもアイデンティティ)出立佇まいが堂々としていて、実はそれは彼の姿勢の良さによるものだったと後に解ったのだが、九州男児の形容が似合う男の子だなあと、私ときたら、少し離れたところから見惚れてしまっていた。ストーカーのように。

別に、服装を流行りのブランドで固めていたとか、皆が欲しがるような時計やスニーカーを履いていたとか、そういうくだらないことじゃないの。原宿の、表参道という「めちゃくちゃたくさんの雑踏の中で、山口君は確かに際立っていた」(これすごいアイデンティティね)し、私にはそう見えた。

姿勢の良さ、日々の鍛錬の証拠とも言える体格の良さ、初夏の短パンから剥き出しになったぶっとい脚、大方の日本人みたいにセコセコしてない威風堂々とした佇まいや歩き方、きっと彼いちばんのお気に入りなんだなと思わせる「トリコロールカラー」(これもアイデンティティ)、数え上げたらキリがないくらい、そういう成分を細かい光の粒子のように辺りに撒き散らしていたから、周りから際立っていたのよね。(アイデンティティってこういうことよ)

ちょっと近づいてみよう。

そう思い、彼から3メートルくらいのところにまで近づいてみた。その時点で私は心に決めていた。

絶対、話しかける。そしてモノにする。

3メートルまでくると完全にロックオンできた。脹脛が天然記念物レベル。ジムだけで鍛えたのが丸わかりの気持ち悪い脹脛じゃなく、さまざまスポーツや日頃の高い活動性で自然のうちに成長した脹脛には明確な違いがある。(これもアイデンティティ)彼は、部活帰りの高校生に見えたし、田舎から出てきた野生の男の子に見えた。100キロ以上の体重がありそうだが、走らせたらめちゃくちゃ脚が速そうに思えた。(これもアイデンティティ
こんにちは。きみ、ずいぶんいい体格しているけど、どこかのスポーツ選手?

こんにちは。

こんにちは?今、この子、私にこんにちは、と言ったわ。途端に私は自分の脳みそが勝手に高揚していくのを自覚した。

自分は大学生です。高校までラグビーしてて、今はライフセービングやってます!

このとき私が感じた印象を言葉で表現するのは、小説家でもない私には難しい。直木賞作家山田詠美ならとても巧く適切に表現するだろうに。

彼が私の唐突なアプローチを、何の警戒もなく、スッと受容したのはわかった。話しかけた瞬間からの表情が一貫してニコニコしていたからだ。まるで待ってましたと言わんばかりに。私は普段から、そういう微細な表情を注意深く観察する習慣がついている。仕事柄。